年度別受賞作品
退職や転居等により氏名公表許諾未確認の方のお名前は割愛させていただきました。
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私の一番の”ありがとう”

第12回 2008年度 受賞作品
優秀賞作品
作者名:(氏名割愛)
所属企業:婦人服販売店勤務

記事(紹介文)


 私は販売の仕事に就いて四年半になります。高校を卒業してすぐこの販売の仕事に就きました。今日まで頑張ってこれたのも一緒に働いてきたスタッフ達や家族の支え、自分自身の努力があったからだと思います。色んな出会いがあった4年半の中でひとつだけお客様のお話をしたいと思います。
 丁度、夏の終りの頃少し肌寒い時間でお客様が多く来店される土曜日、その方は今日初めて来店されたという車椅子のお客様でした。店内は人で溢れ、忙しくバタバタしていた私はお客様の車椅子の車輪に足をぶつけてしまいました。すぐに私は「申し訳ありません。おケガはないですか。」「いえ、大丈夫ですよ。お姉さんこそ足痛かったですよね。」と笑顔でお客様。それがお客様と私の初めての会話でした。
 旦那様が車椅子を押し、その旦那様の肩には買い物袋が沢山掛かっており、お客様のお買い物好きがすぐにわかりました。秋物のトップスを探されているとの事で私も希望に答えられるよう精一杯の接客をしたつもりです。特別な扱いをされるほうが失礼にあたるのではないかと考えていた私は自分なりの接客で対応しました。その日、トップス3点とスカート2点、計5店のまとめ買いで満足いただけたと自分自身も納得のできた接客でした。 
 レジを終え商品を渡し「ありがとうございました。」と最後の挨拶をした後の事でした。店長がサッとラックや棚をずらし、通路を広げ、付近のお客様に「すみません。こちら通りますので失礼します。」と声を掛けていました。その時お客様が今日一番の笑顔で「ありがとう。また来ますね。」と一言。私には頂けなかった言葉でした。悔しい気持ち以上のお客様に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
 その時に気付いたからです。お客さまにとってお買い物しやすい環境であったか、そうではなかったと感じたからです。車椅子の高さに目線を合わせました。商品が見づらい、通路も狭い、レジカウンターが高い、感じとれる事が沢山ありました。すると店長は胸に手をあて、ポンポンと叩いて「ここよ」と一言。痛く伝わった一言でした。
 自店のバックルームにはある言葉を書いた紙が貼ってあります。それは、目くばり・気くばり・心くばりという3つの言葉。今回の接客に欠ける言葉です。私はまたひとつ目標を決めました。この3つの言葉を頭に入れ、お客様に喜んで頂く作業する。当たり前の事ですが、自分ではなくお客様自身が満足できるお買物の時間を提供していきたいと思います。それは全てのお客様に対してもです。
 お客様のお言葉どおり、また旦那様と来店してくださいました。「こんにちは」少しだけ屈み目線を合わせてお話をする。上の段の商品を広げ見やすくする。通路をできるだけ広げる。レジでの精算時、カウンターの前でお金の受け皿を差し出す。帰りは付近のお客様に声を掛け通路を確保。通路から出た所、お店の前で商品をお渡しし、挨拶。決して難しいことではありませんが、店長が教えてくれた通り、お客様の喜んで頂く為の作業であり、私の心くばりでした。
 お客様に挨拶を終えた後でした。お客様が「今日はゆっくり買い物ができたよ。お姉さん、また来るから宜しくね。ありがとう。」笑顔で深くお辞儀をして下さいました。前回、来店された時の事で申し訳ない気持ちでいた私にとって心温まるお言葉でした。
 お客様に言って頂いた「ありがとう」はどれも嬉しいですが、これが私にとって、一番の「ありがとう」でした。

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