年度別受賞作品
退職や転居等により氏名公表許諾未確認の方のお名前は割愛させていただきました。
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私を育ててくれた一言

第13回 2009年度 受賞作品
優秀賞作品
作者名:向 聖秀
所属企業:㈱新星堂 戸畑サティ店

記事(紹介文)


 私がCDショップという音楽に囲まれた環境に胸を膨らませつつ売り場に立って間ない頃の出来事です。店内の棚に商品を慣れない手つきで迷いながら並べていると、「お兄ちゃん、ソン・スンホンのCDある?」 とお客様(以降Mさん)に声をかけられました。
 当時韓流ブームの全盛なのはテレビやメディアではなんとなく知っていたものの『ソン・スンホン』が韓国の人気俳優であることも出演作も何もわからない私は焦りながら商品を探し、ただニコニコしながらMさんのお話にうなずくしか出来ませんでした。
 そしてなんとか商品を見つけお買い上げ頂いたのですが、お帰りの際に「店員さんなんだから商品のことを知っておいてよね」と一言告げられました。衝撃でした。好きな音楽を身近に感じる職場で楽しく働くことができればいいなと考えていただけの自分の甘さもさることながら、お客様にとっては店員に新人もベテランもないという大事なことに気付かれたのです。
 それからは「今度もしMさんが来店されたら少しでもお話についていけるようにしておこう!」と思い、店頭在庫商品を把握しテレビや雑誌を意識してチェックし、いつ来るかもしれないその日に備えました。
 そして何週間か経ったある日、ついにMさんがご来店されました。自分では勉強したつもりでしたが、彼女の知識は幅広くやっぱりついていくのがやっとだったものの、笑いを交えてお話しすることができ「今日は楽しかったわ」と笑顔でお帰り頂け、心の中は「やった!」とガッツポーズでした。
 これをきっかけに自分を指名してご来店くださるようになり、「今まで安いから通販で買っていたけどあなた良くしてくれるから」と高額なDVDも購入して頂けるようにまでなりました。
 盛り上がって30分以上お話したり、韓流について講義をしていただいたり、体調を崩され長期入院されてからはお見舞いも兼ねて商品をお持ちしたりと、私が異動になるまでの2年の間、単にお客様と店員というだけでなく人と人とのつながりって素敵だなと思うエピソードがいくつもできました。
 そして勤務最終日。馴染みのお客様や店長スタッフに挨拶し少ししんみりしながら働いていると、入院しているはずのMさんが来てくださったのです。「退院はできないけれど一言お礼が言いたかったから」と、お菓子とメモをお持ちになって。
 勤務を終え、帰宅途中の列車の中で頂いたメモを開くと、「今まで笑顔で親切にしてくれて本当にありがとう」という一文が目に飛び込んできました。
 私がお客様に対する姿勢や接客の仕方身に付けることができたのは、Mさんの最初の一言のおかげと言っても過言ではありません。そのMさんから感謝のことばを頂けたことはとても嬉しく、すべて報われた気がしました。
 私は今もこの時頂いたメモのことばを胸にお客様と接しています。

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