年度別受賞作品
退職や転居等により氏名公表許諾未確認の方のお名前は割愛させていただきました。
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心のリレー

第13回 2009年度 受賞作品
入賞作品
作者名:三村美香
所属企業:㈱如水庵 博多駅前本店

記事(紹介文)

 昨年の6月13日
 「おたくのぶどう大福の販売はいつからですか?」 とお客様からお尋ねの電話がありました。私は「7月1日からでございます」とお答えすると、「もう少し早くなりませんか?」 とのこと。詳しくお話をお伺いすると「余命あとわずかな身内がおりまして、最後にどうしても如水庵のぶどう大福が食べたいと言っております。なんとか食べさせてあげたい。どうにかなりませんでしょうか?」ということでした。
 私は早速店長に電話の内容を報告すると、「一刻でも早くおいしいぶどう大福を食べていただこうよ」と言うことになりました。そんな思いで、製造部に連絡を入れました。しかしながらぶどうのピオーネは、まだ入荷していません。店長が「ピオーネは私たちが必ず探してきますから作ってください。」と伝えると、「わかりました。他のことはさておいてでも作りましょう。」という返事が返ってきました。
 みんなで手分けをして、ピオーネを捜し求めた結果、あるお店で見つけることができました。それこそ、宝物を見つけたような気持ちでした。翌日、ピオーネを持って製造部のもとへ。みんなの協力で、無事ぶどう大福ができあがりました。
 涙ながらにお電話をされたお客様が、15日にご来店されました。ご家族皆様でぶどう大福を召しあがっていただければという思いを込めてお渡ししました。なんとしても、食べていただきたいという切なる、それぞれの人たちの心のリレーが繋がったものでした。しかしながら、私たちはお客様のご要望にお応えできたというホッとした安堵感がありましたが、喜びを感じることはできませんでした。「最後に」という言葉が心に残っていたからです。
 数日後、お客様からお手紙が届きました。その中には、お身内の方が安らかに息を引きとられたことや私たちへの感謝の言葉が綴られていました。どのようなお気持ちでぶどう大福をお召し上がりになったのかと思うと、胸がいっぱいになりました。
 私たちは、このお手紙をとおしてお菓子を販売する仕事が、お祝い事、お慶び事、お悔やみ事などに深く関わっていることを実感しました。その一方で、この出来事が特別なことであってはならないことに気付かされました。日頃ご来店されているお一人お一人のお客様がどんな思いでお求めになっているかは分かりませんが、お客様との対話、触れ合いをとおしてご要望やご期待にお応えできる自分でありたいと、改めて思い知りました。知らず知らずのうちに流されてしまいそうになりがちな、お客様との応対を反省しました。
 たくさんのお店がある中、わざわざご来店いただけるお客様に、心から感謝の気持ちを胸に(ようこそ)いらっしゃいませ!ありがとうございます!
 日々新たに、さあ今日もお一人お一人のお客様に真心の接客に努めてまいります。

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