年度別受賞作品
退職や転居等により氏名公表許諾未確認の方のお名前は割愛させていただきました。
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お客様に気付かされたこと

第14回 2010年度 受賞作品
入賞作品
作者名:(氏名割愛)
所属企業:婦人服販売店勤務

記事(紹介文)


 私は、今年の春に大学を卒業し、アパレルブランドに入社しました。販売という仕事に就いて約2ヶ月が経ちましたが、初めのころは全くお客様に声をかけられず、声をかけても自信がないので、たどたどしい私にお客様のほうが気を遣ってくださることが度々ありました。今ではなんとかお客様と会話ができるようになりましたが、まだまだお客様に満足していただける接客はできていないと思います。そんな毎日でお店に立ち頑張っています。
 ある日、陳列を整理していると、1人の女性のお客様が入って来られました。そのお客様は馴染みの方ではなく、数回お店にいらした程度のお客様でした。いつものように声を掛け、何をお探しかをお聞きました。
「羽織り物を探しているんだけど」、お客様はおっしゃいました。私は、お客様に薄手のパーカーをお勧めしました。「う~ん…」。お客様は首をかしげています。「商品が気に入らないのかな…?」と不思議に思った私は「どのような羽織り物を探していらっしゃるんですか? どこかに行かれるんですか?」と聞きました。お客様は何か言いづらそうにしていましたが、「実は私、今度、大きな手術を控えているの。それで、病院でも寒くなく、恥ずかしくないようにね」と小さな声でおっしゃいました。
 私はそれを聞いて、「なんて失礼な接客をしてしまったんだろう。お客様の事情を伺うことなく、商品をお勧めしてしまった。」と思い、自分が恥ずかしくなりました。
 お話をお伺いすると、先程お勧めしたパーカーは、丈が短かった為、手術後、体の節々を冷やすとダメだから、首をかしげたということでした。それからお客様としばらくお話しました。お客様は手術することに不安を感じていて、自分の好きなこの店舗だと何か見つかると思い遊びに来られたんだそうです。
 あらためて丈の長い、カジュアルな綿のパーカーとシンプルな紺のパーカーの2点をお薦めしました。気にいっていただいたのか、それをお買い上げ頂きました。お客様は帰り際、私に「あなたのお陰で、とても気持ちよく買い物ができたし、気分も晴れたわ! これで手術も頑張れそう。ありがとう。退院したら、また来るわ」と言ってくださいました。その言葉を聞き、私は心から嬉しかったと共に、心がジーンとしました。この時、私は本当の接客というのは、接客することにより、お客様が、元気になったり、嬉しくなったり、喜んでくれたり、感情が豊かになることなのではないかと思いました。
 世の中には、たくさんのブランドや商品があり、世界の人口の何百倍以上もの服が出回っています。その中で、たった1人のお客様に出会い、たくさんある中のひとつの商品を買っていきます。そのたったひとつの商品に出会える確率ってどのくらいなのでしょう。そんな凄い確率で出会っているお客様や商品に、日々感謝し、愛着を持ち、心からの言葉を発信し、より良い洋服のアドバイスや感動を与えられる販売員に成長して行きたいと思います。

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