年度別受賞作品
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“思い”を添えて

第16回 2012年度 受賞作品
入賞作品
作者名:宮垣 茜
所属企業:㈱ドンク ららぽーと甲子園店

記事(紹介文)


 入社して4年目、私は初めて店長という重要な仕事を任され、とにかく一生懸命がむしゃらに仕事を頑張っていました。
 そんなある日、1人のご年配の女性がご来店され、「新潟に住むお友達にパンを送りたいんだけど……」とご相談を受けました。
今までそういうご用命を賜ったことがなかった私は一瞬ためらいました。送料のこと、日持ちのこと、梱包のことなどの心配が先に立っていました。お話を聞けば、古くからの大親友だそうで、先日うちの店で買ったパンがすごくおいしかったから是非そのお友達にもということでした。商品を褒めていただくのは販売員として単純にすごくうれしいことです。それを遠く離れた大切なお友達に送るなんてなおさら素敵!
 私はすぐにトレーとトングを持ってきて、どういう味や固さのパンがお好みだろうか、お客様のお友達に少しでも喜んでいただけるようにとご一緒に長い時間をかけて商品をお選びし、発送の手配をしてさし上げました。お客様はお帰りの際、何度も何度もお辞儀をして帰っていかれました。
 私は商品がつぶれないように慎重に梱包し、小さなメッセージカードも同封しました。
「○○様とご一緒にお選びしました。気に入っていただけると嬉しいです。」
 無事に届いたかな、美味しく食べていただけたかな、と気にしつつもまた忙しい日常に戻った私はこの出来事のことはもうすっかり忘れていました。そして1ヶ月程経ったある日、ふいにあのお客様がご来店されました。「先日は本当にお世話になりました。あなた、素敵なメッセージカードも付けてくださったのね。お友達は優しい販売員さんの気持ちに触れて思わず涙が出たと言っていたのよ。」 それを聞いて今度は私が泣きそうになりました。
 新しい仕事を任されて右も左も分からずに必死な毎日。失敗したりうまくいかなくて落ち込んだりすることが多い中で、思いがけず感謝の言葉をいただき胸に温かいものが溢れてきたのです。私の「思い」が商品と共に遠く離れたお客様の元へ届けられたのだと思うと、仕事で大変なことなどすっかり吹っ飛んで、ああこの仕事に携わって本当によかったと心から思える出来事でした。
 あれから数年が経ちました。毎日大勢のお客様と接する中で、あの時の一生懸命さと、一人ひとりのお客様にきちんと向き合う気持ちは自分の中にきちんとあるだろうか、と時々自分自身に問いかけています。どんなことにも「思い」を添えて、精いっぱいのことをしてさし上げられる販売員であり続けたい。販売の仕事は、お客様の喜びを自分の喜びに出来る素敵な仕事なのですから。

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