年度別受賞作品
退職や転居等により氏名公表許諾未確認の方のお名前は割愛させていただきました。
作品ジャンルで探す
作品カテゴリーで探す
キーワードで探す
各記事には関連キーワードを設定しています。
自転車・メガネ・子供・感激…などキーワードを入力してください ※複数は(カンマ区切り)

一足に隠されたエピソード

第16回 2012年度 受賞作品
入賞作品
作者名:矢吹さやか
所属企業:㈱かねまつ 銀座かねまつ4丁目店

記事(紹介文)


 私が新入社員の頃の1組のお客様とのエピソードです。当時の配属先の百貨店の婦人靴売り場は、お世辞にも男性1人で入りやすいとは言えない雰囲気でした。
 そんな売り場に、ある1人の男性のお客様がいらっしゃいました。初めにその方をお見かけした時は、慣れない婦人靴売り場に戸惑っていらっしゃる様子で、フロア全体を一通り見て、足早に帰って行かれました。数日後、その男性がもう一度婦人靴売り場に来店されました。前回よりもじっくり商品をご覧になっている様子でしたので、「先日もご来店頂きましたよね? 何かお探しですか?」とお声がけをしたところ、「実は娘にプレゼントする靴を探しています。」という返答でした。
 詳しくお話を伺うと、娘さんの結婚式の披露宴で使うウエディング用の白い靴を探されているとのことでした。披露宴で使用するドレスは、お母様から譲り受けたものを着用することになっていて、当日に履く靴だけがなく、「靴は自分がプレゼントしたいんだ。」とおっしゃっていました。
 とても素敵なお話でしたので、ぜひお役に立ちたいと思いました。一生に一度の大切な結婚式で使用する靴なので、ベストな1足を選んでほしく、百貨店の靴売り場という強みを活かしながら、フロア全体を使い接客し、かねまつの商品の中から最適な1足を提案することが出来ました。そんな出来事から数ヶ月後、1人の女性の方が修理の靴を持参されてご来店なされました。
 修理個所を確認しながら、「すごく大切に履いていらっしゃいますね。ありがとうございます。」と話しかけると。「実は、こちらで父が購入してプレゼントしてくれた大切な靴なんです。」とお話くださいました。それを聞いた瞬間、数ヶ月前の男性との接客を思い出し、この女性があの時の男性のお嬢様だということが判明しました。
 靴のプレゼントはサイズやフィッティングの関係でとても難しく、あの時の靴がどうなったか心の片隅で気になっていたのですが、サイズや履き心地に問題はなく、とても足に合っていたこと、父親からの思いがけないプレゼントにとても感動したことなどをお話してくださいました。
 こんな形であの時の靴に再会できるなんて、夢にも思っていなく大変感激しましたし、同時に1足の靴に込められている大切な思いを肌で感じることができました。そして、お客様が修理等でお持ちになる1足1足の靴にも素敵なものがたりが隠れていることを教えていただいたエピソードでした。

タグ(関連キーワード)

コンセプト 審査委員長紹介 お問い合わせ 日本専門店協会サイト プライバシーポリシー
Copy right (c) Japan Specialty Store Association All Rights reserved 2009.