年度別受賞作品
退職や転居等により氏名公表許諾未確認の方のお名前は割愛させていただきました。
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プロフェッショナル

第16回 2012年度 受賞作品
入賞作品
作者名:(氏名割愛)
所属企業:一般

記事(紹介文)


 「どうもお世話様でした」と笑顔でお店を後にすると、とても気持ちがいい。たぶん店員さんもお客を送り出した後。同じ思いを抱くだろう。
 お客は我儘で、なれなれしく隣にいられるのも嫌だし、放っておかれるのも寂しいものなのだ。店員さんはその心理を上手く読み取って、着かず離れずの距離を保ってくれる、そんな雰囲気の人が好ましい。
 洋服店の店員さんは皆さんセンスが良い。それぞれのブランドの服を上手に着こなしている。素敵だわと思いながら、ディスプレイしてある服を吟味する以上の視線を店員さんに向ける。
 私は生来ズボラな性格なので、「そのまま下さい」、と店員さんが着ている物をそのまま真似することがある。すると、色や形が少しずつ違う物をいくつか出してコーディネイトしてくれる。お客の好みを素早く見抜き、数多くの服の中から見つけ出し、さっと並べる店員さんの所作を見ていると、プロフェッショナルだわと感心する。そんなことを考えつつ、予定よりもたくさんの服を買ってしまうこともあるが、楽しい時間を過ごしたと思えば、軽くなった財布もあまり気にならない。
 数年前、友人の結婚式に招待された。20代の頃は頻繁にあった結婚式も30代に入るとほとんどなくなった。久しぶりの晴れの場なので、何か新調したいと思いデパートに入った。手持ちの服と合うものを頭の中で足し算引き算しながら、靴、バッグ、アクセサリーを見て回った。
 このネックレスとイヤリング、あの服に合いそうだわ、とある店の前で足を止め試着をし、少々予算オーバーだったが迷いながらも買ってしまった。その時は「お世話様」とにこやかに店を出たのだが、さあ帰ろうと駅のホームに立った途端、後悔が込み上げてきた。
 こんな高価な物を買って、結婚式以外に身に着ける時があるのだろうか。当時は2人の幼稚園児を抱え、自分のオシャレは二の次だったので、アクセサリー類とは無縁の生活をしていたのだ。考えた挙句、駅からデパートに戻り返品した。
 「お気に召さなかったという事でよろしいですか?」 返品理由を書類に書かねばならないらしく、店員さんは申し訳なさそうに尋ねてきた。そんな姿に、私はなお一層恐縮し、すいませんと繰り返しながら店を出た。
 その店員さんの態度は立派だったと今も思う。恥ずかしそうに返品しに来た私に対して気遣いがあった。内心嫌な客だと感じていただろうが、そんな事は微塵も見せず、後味の悪さを残さない接客に努めていた。
 ここにもやはりプロフェッショナルを感じずにはいられない。ほんの少しの出会いだが、何年経っても忘れられない。感心させられたり、反省させられたり、そんな出会いをこれからも期待したい。

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