年度別受賞作品
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第14回選評

第14回 2010年度 受賞作品
選評
作者名:髙見マーケティング研究室主宰 名古屋学芸大学大学院特任教授 高見俊一氏
所属企業:

記事(紹介文)


 第14回「あったか・えっせい」は、以前よりもまして質、量ともに一段とレベルアップしました。応募数は、お店部門の応募が、462編から545編へ、お客様部門が77編から102編へと大幅に増えています。リーマンショック以降、小売業界は、一部で価格競争に入り、熾烈な生き残り競争を展開しています。価格競争の最終段階は、参画企業の体力が消耗し、勝利者不在のまま終焉を迎えます。一方、付加価値を高め、接客レベルを競い合うサービス競争は、業界のレベルアップに貢献します。さいわい、専門店業界は、価格競争に巻き込まれず、日本の専門店の接客レベルは「世界一」と誇れる水準にまで到達しています。応募作品の質、量ともにレベルの高いのは、その証左ともいえるでしょう。これからは、高齢のお客様が一段と増えます。特徴的には、価格や利便性志向より、接客での満足を求めるようになります。その傾向が急速に顕在化してきました。経営努力のポイントを再度点検するためにも専門店の「現場」にさらなる注目をする必要があります。
 最優秀作品は、㈱オカダヤの佐野友紀さんの作品「旅の思い出に」です。まだ商品知識の少ない若いお客様との接客で、丁寧にそしてやや指導性を発揮することで、1点だけではなくお客様は、感激のあまり試着した4点全部を購入していただいたという作品です。商品の正しい使い方をご存じないお客様は意外に多いと思います。専門店は、売るだけではなく、お買い上げいただいた品物の使い方でも満足してもらうことが、役割の特徴のひとつであると作品は教えてくれます。
 優秀作品は、㈱玉屋の伊藤美織さんの作品「あなたに会えて良かったです」。ピーク時、夢中で接客しているときに、声をかけてくれたお客様が、まったくの新人の時に、接客を失敗してしまったお客様だった。そのお客様が自分を覚えていて、その後も見守り続けてくれていたという感動が綴られている作品です。お客様にベストを尽くして接することの大切さを教えてくれています。
 入賞作品は、12編あり、前回より4編増えています。順に、お客様と直接対面しない接客、新しい領域が舞台になっている、㈱虎屋、磯崎奈々子さんの「ひとりあったかエピソード」。扱いにくいお客様との接客で、工夫を重ねながら、気に入っていただく苦心談が書かれている、㈱ドンクの鈴木明菜さんの「ドンクのお父さん」。一生懸命だけでは不足で、お客様の気持ちになったうえで一生懸命努力することを教えてもらった、牧野香奈子さんの「変わらない思い」。㈱新星堂の高橋香織さんの「サプライズ」は、お客様に喜んでいただくサプライズを日常の販売活動の中で仕掛けていく企画で、想像以上のお客様の感動を産み出していくという作品です。連続入賞を続ける「虎屋」「ドンク」「新宿高野」「新星堂」の各社は、企業内での「サービスに対する文化」が形成されていて販売活動にも日常的に反映されている素晴らしい企業だと思います。
 ㈱板垣の浦野志緒さんの「沈黙は金」は、ハンデキャップを持つ老人のお客様との接客で、時には、お客様のペースに合わせ、沈黙をもって対応することの大切さを教えてくれています。その他の入賞作品、金沢優子さんの「お客様に気付かされたこと」、長谷川早苗さんの「二つの贈り物」、㈱両口屋是清、近藤美香さんの「手紙でつなぐ感謝の気持ち」、小倉麻美さんの「二人がくれた贈り物」、㈱アスプルンド、首藤貴子さんの「穏やかな笑顔」、㈱如水庵、佐野裕美さんの「催事で経験したこと」。甲乙つけがたい優れた作品が揃いました。そして、お店部門の最後は、一般店部門の宇野知子さん、この部門からは初めての入賞です。結婚式場の花屋での体験で、50代の紳士のお客様から、花束づくりの初めての注文を受けた際に失敗したにもかかわらず、優しく対応してくれた感動が綴られています。
 そして、最後はお客様部門の入賞作品、白石博子さんの「スーパーのYさん」は、インターネット広告関係の仕事をされている作者が、接客販売の素晴らしさ、他の販売員、店からではなく「私から買う」「この会社、この店で買う」ことの意味を痛感させた接客販売の素晴らしさを教えてくれています。
 リーマンショック後、あっというまに、日本の主要な情報発信基地、銀座、新宿、原宿等で、世界の「ファストファッション」が展開され、その勢いに圧倒されました。価格に敏感になっていた生活者がジャストタイミングで飛びついたわけです。一方で、値段をあまり気にせずに、おいしいものに行列ができる現象も目につきます。専門店は、お客様との絆をしっかりしたものにしつつあります。外国人観光客が急速に増えていますが、日本の専門店の接客サービスのレベルをさらに向上させることで、「世界一」の評判を意識的にPRすべき時が来たようです。その実力は、「あったか・えっせい」の質、量の充実で証明されつつあります。

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