年度別受賞作品
退職や転居等により氏名公表許諾未確認の方のお名前は割愛させていただきました。
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最後にいただいた信頼

第02回 1998年度 受賞作品
優秀賞作品
作者名:(氏名割愛)
所属企業:紳士服販売店勤務

記事(紹介文)

 
 中年のご夫婦がスーツを見ていました。ご主人の体格から迷わずイージーオーダーをお勧めしました。「ここのオーダーで一度失敗している」と鋭い目でにらまれましたが、Mさんは紺のスーツを購入して下さることになりました。
 3週間後、できあがりを取りに来られたMさんは激怒されました。①上衣のわきの部分が少しふくらむ、②小股部分(チャックの部分)がみっともない。これは先回と同様の仕上がりで何ら改善されていないということでした。実際に着用した状態を拝見したのですが、特に問題はないと思いました。けれどもその時は、もう一度作り直しを承りました。
 新しい服を持ってMさん宅を訪ねました。まだ気に入らないらしく「お前のところは技術が低い」「着てみっともない」からはじまり、話し言葉のあげ足までとり、言いたい放題に文句を言われました。一応、1着目よりも改善されたことは認めて下さり、納めることが出来ました。
 ところが後日、Mさんから電話があり、(教師なので)「チョークを持って字を書いていると服が後ろへずれてしまう、脇のふくらみは少し良くなったが窮屈でたまらん。」と怒鳴ります。すぐに自宅へうかがい直に話を聞きましたが一方的にののしるばかりです。
しかし洋服に関する要望は具体的でしたので、「気に入っておられる服を見せていただけますか」とお願いしますと、「見せるつもりはない、お前のところの技術でやれ」と言うのです。
 本当に自分に合った服を作る気があるのか!と思いました。そう言えば最初からケンカ腰だったし、文句ばかりつけてきます。とうとう私は頭に来て返金を申し出て終わりにしようと思いました。Mさんは先手を打つかのように「一度受けたのだから金は返すな、出来るまで何十着でも作らせてやる。世の中甘くないんだ」と言い、その後2時間ほど、言葉少ない時がたちました。Mさんは奥へ行き、自分の服を何着か持って来ました。そして順に着用しだしました。その中の一着を見た時、ハッとしました。確かに脇や小股がスッキリとしており窮屈そうではありません。これは何とかなると思いました。
 同席していたオーダー担当のTさんは細部にわたって採寸しましたが、「ほとんど寸法は同じなんですヨ」と弱った様に言います。「同じでないから文句を言うんだ」とMさんはまた怒ります。
 翌日、私は上司に相談し、型紙を作る人に来てもらう様お願いしました。その方とMさん宅へ何度もおうかがいし、仮縫いに仮縫いを重ね、一つ一つ要望に近づけていきました。5回目でようやく本縫いにかかることができ、6回目でなんとか納めることが出来ました。
 確かに度を越えた要求ではありましたが、お客様の要望を逃してしまうことなく対応できて良かったナと思いました。
 最後にMさんがおっしゃいました。「もう一着、作ってくれんか………」

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