年度別受賞作品
退職や転居等により氏名公表許諾未確認の方のお名前は割愛させていただきました。
作品ジャンルで探す
作品カテゴリーで探す
キーワードで探す
各記事には関連キーワードを設定しています。
自転車・メガネ・子供・感激…などキーワードを入力してください ※複数は(カンマ区切り)

お客様は豪快おばさん

第02回 1998年度 受賞作品
入賞作品
作者名:下川原 敦
所属企業:㈱新星堂

記事(紹介文)


 私のお客様で、月1回必ず店に立ち寄ってくれ、CDシングルを1枚買っていかれる年配の方がいます。高校生の娘さんがいて、その娘さんとCDを共有しているようで、わりと若い人が聞くようなCDを買っていかれます。先日は、「反町っていい男だね」と、発売されたばかりの反町隆志のCDシングルを手に取り、「娘も好きでさ、親子っていうのは男の趣味まで似るもんなだべが」。こんな調子で、もう機関銃のようにまくしたててくる豪快なおばさんで、私は相づちを打つのが精いっぱいという感じなのですが、なにせ話が面白くて、いつもついつい話し込んでしまいます。そのときの反町の話にも続きがあって、「娘のボーイフレンドがまたいい男でさ、反町に似でんのさ、私も本気でほれてしまってさ。んでもやっぱり若さには勝でねな。ガハハハ」。これには私も仕事を忘れて大爆笑してしまいました。
 こんな感じで、来店していただいたときには必ず30分ぐらい話をしてからCDを買っていただいていたのですが、先日帰り際に、こんなことを言って帰られました。「こうやってさ、CDひとっつ買うにもさ、ただレジさ持ってって買うんではおもしろくねがらさ。だがら私はいつもあんたの所で買うんだよ。家の近くにもレコード屋さんはあるんだけどもさ」。私にとってこのお客様との30分ほどの会話は、「接客をしている」という意識がなかっただけに、うれしくもあり、また勉強させられたと思い知るひと言でした。
 普段は、比較的自分と年が近く、趣味も似通っているお客様と接する機会が多いのですが、そういう若いお客様は、様々な情報を提供したり、そのお客様の趣味に合うようなCDをお薦めすることで満足していただけることが多いのですが、このお客様のように、ただ話し相手になるだけで喜んでいただける場合もあるのです。極端に言うと、10人のお客様がいたら十通りの接客の仕方があるのだと思います。それを見つけるのが、接客の難しさでもあり、楽しさでもあるのだと思います。

タグ(関連キーワード)

コンセプト 審査委員長紹介 お問い合わせ 日本専門店協会サイト プライバシーポリシー
Copy right (c) Japan Specialty Store Association All Rights reserved 2009.